最終学期:卒業演習

最終学期:卒業演習

サンディエゴ州立大学スポーツMBA留学ブログ、本日の投稿ではいよいよ最終学期である二年目の春夏学期の 卒業演習(通称: 795/Seven Ninety Five)の概要や目的、仕組みについて書きます。下記過去投稿で少し触れましたが、San Diego State University の Sports MBA は “A sprint and a marathon” とプログラム初日にディレクターからの言葉がありました。振り返るとこの言葉の意味を改めて理解したのはこの学期だったかもしれません。

タイムライン

下図でスポーツMBAプログラムのタイムラインを示しました。1月に入学をしてから1年以内に座学が終了し、現場での半年間の実習が始まります。

私の代、2019年度卒のクラスでは11月30日にファイナンスの期末試験を以て秋学期が終了しましたので、1月15日の入学から実質11か月未満で座学の終了でした。普通のMBAスクールが2年間かけて勉強する内容(=マラソン)を11か月に凝縮して走り抜ける(=短距離走)ということを、身をもって経験したわけですが、息をつく間もなく待っているのが職探しです。

卒業式が6月の中旬にスケジュールされており、卒業には所定の労働時間を働くことが条件になっていますので、タイムラインの観点からは、所定の期日までに卒業論文に値する仕事を見つけなければなりません。仕事を見つけられない人は、「卒論が書けない=卒業できない」いうプレッシャーに年末年始さいなまれることになります。

私の代では、就職先報告期日が1月15日に設定されていましたが、同じクラスの人には3月になってようやく仕事が見つかった人もいました。この辺の就活事情や振り返りについては次回の投稿で詳しく書きたいと思います。

目的・内容

さて、サンディエゴ州立大学スポーツMBAプログラムの最後の関門である卒業演習の目的は、

MBAで習得した知識をベースにコンサルティングをし、それを体系的にまとめた卒業論文を書くことです。

仕事や職種に関しては、MBA知識を活かせるコンサルティングができるという目的に見合うもので、プログラムディレクターの承認さえ下りれば、無給のインターンであろうが、フルタイム(正社員)のポジションでも大丈夫で、場所についてもアメリカでなくとも世界中どこでこの卒業演習を行う事ができます。過去の代には起業した方もいました。 望んで選ぶ人はスポーツMBAプログラムである性質上少ないですが、実は就職先の業界がスポーツビジネスである必要もありません。 重要なのは、MBAで学習した内容を活用して仕事のManagerial Challenges / 経営課題を解決でき、卒論での提案内容がを職場に対してでできるクオリティにする事です。

私の場合を例に説明すると、日本に帰国して参画できるプロジェクトが見つかり、〇グビー 〇 ールドカップの メ 〇 ストアをプロデュースするアメリカ母体の会社で卒論期間中働いたのですが、マーケティングの観点からストア内でのスポンサーシップアクティベーションの提案、サプライチェーンの観点から在庫補充のフレームワークを会計の視点も交えつつ作り、また戦略論の観点から、今回のスポーツイベントを機に日本に支社を作った同社の取れる戦略的方向性についてSWOT、PESTで環境分析し、論じました。

コースデザインの意図

なお、卒論で「提案」する内容に関しては、かならずしも職場にたいして提案する必要はありませんが、 このようなコースデザインを取っているのはなぜでしょうか。

実はこのような「コンサルティング」を目的とした卒業演習コースデザインになっている意図としては、スポーツMBA生が「卒論を書かなければいけないから」というのを口実に、上司からぐいぐい情報を貰えるようにし、質の高い提案をすることを促し、ひいては組織内でのスポーツMBA生の重要性を高めることにあるとされています。

表立ってこれをプログラムディレクターが言っているわけではないですが、私の数年先輩でGolden State Warriorsのスポンサーシップ担当として働いている卒業生が795についてアドバイスがてらゲストスピーチに来た時、「卒論書くのに必要だから」と各部署をめぐって、情報収集し、上司にたいして質の高いアイディアを提案し、卒業して以降もGSWでの雇用継続に繋がったエピソードを語ってくれました。

実際、最終的な卒論提出とプレゼン前の別個の提出課題(下記)からもこの「意図」がうまく組み込まれているなぁと感じます。

  • 上司から卒論演習のリサーチ許可を書面で貰う事
  • 仕事開始後1か月のタイミングで、5つのLearning Activitiesを自分で設定し、それぞれいつまでに完了させるか申告すること
  • そのActivitiesをMBAで習った理論との関連性を説明すること
  • Activitiesと短期的/長期的 なValue-addを設定すること
  • 上司からそれぞれのActivitesの評価を貰うこと

ある意味否が応でも積極的に職場内で情報収集し、業務知識を高めて、コンサルティングの提案をまとめるコースデザインになっていると思います。卒業前に担当教授へのプレゼンもあるのですが、都合がつけばそのプレゼンに自分の上司などを呼んでも良いことになっています。キャリア開拓の手段として利用しようと思えば利用することができるわけです。 これはスポーツMBA生としてありがたい設計でしたし、実用性を重視するSDSUのスクールカラーが色濃く出ていると思います。

次回の投稿では卒業演習の時の就職活動事情について話をしたいと思います。