卒業演習:就活事情

卒業演習:就活事情

前回の投稿の続編として、サンディエゴ州立大学スポーツMBAプログラムの卒業演習の就活事情についての経験談を書きます。

タイムライン

ここでスケジュール感を改めて確認しましょう。11月末に最後の期末試験があり、1月15日までに卒業演習先を探す必要があります。(実際の日付は年度によって前後しますが目安として)

悲しいかなアメリカで12月というのはホリデーシーズンで、業界によっては職場でも金曜日は2時で早上がりが当たり前になったりするような、1年間の中で一番就職活動に適していない時期なのです。

この点、学生の間ではプログラム設計に不満を持つ人は多かったですが、ここでなおさら重要になってくるのは、学業を多少犠牲にしてでも秋学期中に募集されている仕事をリサーチをしてガンガン応募することです。最終学期で卒論を書かせてもらうにはGPA3以上が必要になってきますが、もし Valedictorian (首席)卒業でも狙っていない限り、オールBで着地する程度で問題ないと思います。

学校の支援体制

企業から学校にオープンポジションの案内があるときには、情報を転送してくれますが、プログラム側から進路相談を個別に時間を取ったり、関連しそうな卒業生と繋げたりするような手厚い支援体制ではありませんでした。ただ、私の場合は、自分からディレクターに相談の時間をお願いし、親身にアドバイスと卒業生の紹介をしていただきました。「自分からアクションを起こす」事が大事かと思います。年を通してゲストスピーカーをたくさん呼んでくれていますし、秋学期は卒業生が話に来る回数も増えるのでそこから派生する形でネットワーキングを試みたりすることも求められます。

日米での就職活動の違い

まず大前提としてアメリカでは日本のような終身雇用制度、年功序列型賃金な社会主義的な労働市場と違って、解雇もあり、ヘッドハンティングもあり、かなり流動的で自由経済な側面が色濃く出ています。

このためアメリカでの募集広告での応募要件を見ると「〇〇の経験かつ、〇〇の経験かつ、〇〇の経験かつがある人」といったように、マイクロターゲティングな形で人が募集されます。3年に1回の転職は当たり前の世界なので、このようにピンポイントな絞り方をしても人が見つかるのでしょう。

私が見たNFL本社の国際マーケティングのポジションでは、「メディア業界での営業、新規事業開発経験、かつデジタルマーケティングの経験、かつトップティアの戦略コンサルティング会社勤務経験がある人」とハイレベルな条件の掛け算の繰り返しで、「前職で通信系の会社で海外支社のマネジメントやってました」なんていう経歴では全然要件に重なってこないので相手にされませんでした。

一方でエントリーレベルのポジションはどうでしょうか。私が応募したNFL球団のチケットセールスやスポンサーシップの営業のインターンポジションで、ジャクソンビル・ジャガーズの選考に最終選考まで進んだのですが、面接の質問で何度か言われたのが、「あなたはこのポジションにOver-Qualifiedだと思う」という事でした。砕けた言い方をするとオーバースペックだという事です。それが理由で最後のふるいに残らなかったとは言いませんが、面接相手が自分よりもキャリアが浅い場合、面接する側の心理としては、ある意味自分の職をリスクにさらすことにもなるので敬遠されます。そこらへんのバランス感覚に留意して面接の質問に答える必要があると感じました。

ビザ

アメリカで就職するにあたり、苦労するのはビザでしょう。卒論期間中の半年+卒業後の1年間はCPTとOPTの組み合わせで働くことができますが、その後はH1-Bビザを企業がスポンサーしてくれないとアメリカでは合法的に働くことができません。弁護士費用などを会社が負担しなければならないし、それだけの付加価値が他のアメリカ人よりもある事を組織に認められなければならないでしょう。

さらに厄介なのは、H1-Bビザが発給される時期が毎年10月と固定されていることです。6月に卒業して1年間OPTでビザなしで働くことができますが、1年経ってH1-Bへ切り替える際に4か月間の空白期間が生まれます。卒業生の先輩でWassermanに就職したカナダ人の例ではその空白の4か月間でカナダオフィスで働くことでやり過ごしたそうですが、そう簡単に同じようなことができる企業、球団は多くないでしょう。

SMBA’19就職先

2019年卒生の卒業演習先として上記企業・団体がありました。社会人歴がなかった人はインターンで入る事が多かったようですが、社会人歴がある人はフルタイムポジションでのプレイスメントが主でした。これは入学前には想定していなかったという意味で「意外」だったのですが、結果的には社会人歴の長かった人の方が仕事を見つけるのに時間がかかりました。

理由としては、2つあるでしょう。まず、アメリカ人の職探しの価値観としてとても重視されるのは「お金」です。特に既にマネージャークラスのポジションを経験している人たちとしては、卒論を書かなければならないからといって、安易にエントリーレベルのポジションに就職して、その後の履歴書の見栄えを悪くし、労働市場での自分のマーケットバリューを下げる事は、給料面でかなり抵抗があったでしょう。

そこに相まって募集職種の少ない時期である12月での就職活動が要因ということが挙げられます。 スポーツにキャリアチェンジするためにスポーツMBAに入ってはいますが、自分のマーケットバリュー(給料)を下げない形で転職するには、前職での経験に絡めて職を探すことになります。必ずしも自分の経験に沿った募集職種がその時期にオープンになっているとは限りません。

私は将来の目標の観点から全く新しい分野でのスキル開発が必要になってくると分かっていたのでお金のことは気にせず低い職階からやり直す形で就職しましたが、正式卒業をもう1セメスター遅らせてでも3月まで我慢して就活したクラスメイト2人は、前職のスキルが活かせる職種を見つけ、10万ドル近く年収で稼いでいると聞きました。

総括

このセメスターを振り返って改めて大事だと感じるのは「キャリアゴールからの逆算を明確にする」ことです。「スポーツが好きだから」という理由で「スポーツMBAに入り、スポーツにかかわる仕事がしたい」、だけでは不十分です。

スポーツとひとくくりにしても、チケットセールス、スポンサーシップ、メディア周り、マーチャンダイジング、オペレーションなど球団だけでも様々ありますし、球団以外に目を向けるとスポーツアパレルブランドもあれば、スポーツテック企業もあり、様々なキャリアがあります。

座学が1年間で社会人復帰までが短いSDSUのスポーツMBAプログラムに入るのであれば、どういう組織のどういう職種で仕事をしたいのかを明確にし、Team Work Online LinkedIn などの就活サイトでいま出ている募集広告で実際の採用要件を確認し、自分がその採用要件を埋めるには、入学前のキャリアで身につけられるスキルはあるのか、入学後学校のプロジェクトでどういうテーマを選んだ方がいいか、在学中できるインターンはあるか、どういう人に会ってネットワーキングをする必要があるかなど、ゴールまでの道筋を作って計画的に行動する必要があると思います。